ニューリテールのas a service化
近年注目を集めていたAmazonGOであるが、仕組みの外販が始まる模様。
その基本的なポイントは、
「クレジットカード登録と課金」
「店内の顧客追跡とバーチャルカートの処理」
「退店後のレシートなどの処理」
の主に3つとのこと。決済及び画像処理までがパッケージ化されたもののように見える。
一方、中国のプラットフォーマー阿里巴巴は、LSTと呼ばれる、中小企業向けの決済・物流・データ分析までをパッケージ化した仕組みを既に提供している。Amazonのソリューションより対象にしているサービス範囲が広い。
アリババ集団が展開する「LST(零售通:Ling Shou Tong)」とは、地方の中小の小売店や家族経営で成り立っている零細の小売店、いわゆる“パパママストア”に対して、飲料・食料などを含む日用品・消費財分野で、仕入れ、物流、デジタルマーケティングなどの機能をプラットフォームとして提供し、会員組織(ネットワーク)化したものだ。
プラットフォームに登録し、ネットワークに参加した小売店は、国内外の多くのブランドやメーカーがLSTの提供するBIツール(専用サイト)上に出店した“旗艦店”を通じて、商品を発注・仕入れできる。発注した商品は、アリババがEC向けに中国全土で構築した物流網を使って店頭まで数日のうちに届けられる。
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00249/00004/
対中小企業向けの決済・物流・データ分析までをセットにした包括ソリューションは日本ではまだ見られていない。
同分野の今後の動向を注視していきたい。
現金を使わない方向でのキャッシュレスを考える
現在日本政府が主導して、キャッシュレス推進の旗を振っており、2025年までにキャッシュレス比率40%を目指すという。還元事業やマイナンバーカード普及・促進に向けたポイント付与等を背景に、ある程度キャッシュレスは進展すると予想するが、2025年、2030年いわゆる完全キャッシュレスにはまだまだ程遠いものと考えられる。
キャッシュレス化による恩恵は、特に社会全体で負担しているコストの観点では、90〜100%に近いものが実現できないとなかなか享受できず、単なる二重投資という話になる。
そこで、キャッシュレス化を真に進めていくためには、キャッシュレスの利用促進のみならず、現金が使われないようにする施策が必要であると考えられる。具体的には、店舗における①現金支払の上限制限②受付拒否、また、③紙幣廃止・切替措置、④硬貨鋳造・流通の減少・停止などが考えられるだろう。
①現金支払いの上限制限については、欧州では、大半の国でマネロン防止の観点から、店頭での現金支払につき支払上限を設定することで、店舗側が現金支払を受けることを嫌うように仕向けることでうまくキャッシュレス化を促進しているように思う。(後日、欧州の状況については詳細更新予定)欧州のみならず、マレーシアやオーストラリアでも導入検討がなされている模様で、オーストラリアにおいては、同施策導入による歳入増加も見込んでいるとのことである。
②現金支払いの受付拒否は、スウェーデンやアメリカの一部州で、一部店舗が自発的に実施していたものに対して、消費者団体などからの反発の声も上がっていることを背景に、受付拒否はさせない方向性で議論がなされている。(スウェーデンの中央銀行は、ホームページに現金支払いの受付拒否は契約の自由の話であるとの見解を掲載している)
③また、紙幣利用のディスインセンティブの施策では、インドにおいて、マネロン防止の観点から、高額紙幣の廃止・切替といった形での、現金の利便性を著しく下げる施策を行ったが、こちらは効果については賛否両論あるようだ。なお、キャッシュレスが極めて進んでいるスウェーデンにおいても紙幣切替が行われている。
④最後に硬貨を減少させる方向性の施策では、カナダでのペニー通貨の単位切り上げの施策や韓国におけるお釣りの電子マネーチャージなどの施策が挙げられよう。日本での一円玉のように、硬貨鋳造・流通はコストが非常に掛かることから、少額硬貨の廃止等の施策は社会コストの削減に効くことは間違いない。
日本においても、政府審議会等で現金利用のディスインセンティブについては度々話題には登っているもの、と聞いているが、日本国民の現金愛や、キャッシュレス社会に移行することで負担が増加する店舗側の加盟店手数料等の関係から、なかなか本格的な議論には至っていないのではなかろうか。
キャッシュレスの推進もある程度進んだ段階で、上記のようなキャッシュの利用をやめさせる方向性での施策検討が必要になるのではなかろうか。
キャッシュレスとデータ利活用
以下の記事で興味深い一文があったので紹介する。
平井前IT担当相はなぜキャッシュレス化を憂えるのか(https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00067/111800053/?n_cid=nbponb_twbn)
“”クレジットカード会社が使えるデータを持っているかというと何もない。実質的に活用可能なデータを持っているのはPOS(販売時点情報管理)データを握っているところくらいだろう。””
CLOに取り組んできたカード会社は何を思うか。またPOSデータ(≒購買データ)をもつ大手流通・小売はどう動くか。当初決済データの利活用がキャッシュレス推進のモチベーションと宣っていたQR決済事業者の多くも、サービスローンチから1年以上たつ現在において、こと決済データの利活用の観点では有効な活用が出来ているようには見えない。
足もと注目を集めているキャッシュレス還元事業(経済産業省)、また同事業終了後に開始が予定されているマイナポイント還元事業(内閣官房、総務省)など一般消費者にとって事業趣旨・詳細が伝わりにくいキャッシュレス推進政策が各省庁にて続くなか、改めてキャッシュレス推進意義の明確化(≒優先順位をどうするか)および省庁横断での政策立案が必要ではなかろうか。(後日追記予定)
印Paytm、電子決済で苦戦 株主のソフトバンクに影響も:日本経済新聞
[FT]印Paytm、電子決済で苦戦 株主のソフトバンクに影響も:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53404770W9A211C1000000/
以下は日本市場にも大変示唆のある指摘。日本でも主に新興Pay系が利用するUPI類似のインフラがあっていい。非競争領域だし、昨今のNTTデータ等への風当たりの強さを見ていても、今後も銀行にチャージ手数料払って首根っこ押さえつけられ続けるくらいならこれくらい投資する企業たちが出てきてもいい頃合いな気もしています。
以下日経記事より
抜粋。
"Paytmは、政府に先行して独自の小規模な「ミニUPI」を開発することを怠ったことが大きな機会損失だったとみるアナリストもいる。それをしていれば、インドの決済システムを支えるインフラを自ら開発できたと言うのだ。
「Paytmの大きな失敗は、自社の電子財布ビジネスをUPI(のようなインフラ)に発展させなかったことだ」と金融サービスを大規模に展開するあるアジア系スタートアップのトップは匿名を条件に語った。「Paytmは、UPIと競争できると考えていたが、フォーンペやグーグルペイなどが次々に参入してきた。決済サービスの観点では、(Paytmが)市場を支配できるとは考えにくい」"
ネット不正送金、秋から急拡大:日本経済新聞
ネット不正送金、秋から急拡大:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53937880X21C19A2CR8000/
事あるごとに「セキュリティ対策の必要性」を盾に、今度新設される高額資金移動業に対して規制強化を求めていた銀行サイドですが、まずは自分たちからでしょうか…
しかも、アカンのはワンタイムトークンであって、多要素認証に問題があるかのような書き方は如何なものか。。。
法改正や各種送金サービスのさらなる普及により、銀行以外での送金が一般化することが見通されている中で、業界同士で争ってる場合ではなく、業界横断で対応することが求められているのではないでしょうか。
マイナンバー、ポイント付与に2458億円 20年度予算案:日本経済新聞
マイナンバー、ポイント付与に2458億円 20年度予算案:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53618390Q9A221C1EA4000/
キャッシュレスと国民ID普及が悪魔合体した施策のようだ。
インドがインディアスタックを契機にしっかり国民IDを付与している一方、Max5,000円という微妙なインセンティブで、取得手順が極めて煩雑・イケていないマイキーIDをgetしないといけないこの施策。
国民ID基盤の普及はデジタルガバメント成立の大前提である一方で、取得にかかるメリットをインセンティブ以外に提示・周知できておらず(実はデジタル・ガバメント閣僚会議で施策の方向性は議論されているのだが…)、とにかく国民ID取得してお金あげるから、というのはさすがに順序が逆ではなかろうか。