金融落書き帳

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現金を使わない方向でのキャッシュレスを考える

現在日本政府が主導して、キャッシュレス推進の旗を振っており、2025年までにキャッシュレス比率40%を目指すという。還元事業やマイナンバーカード普及・促進に向けたポイント付与等を背景に、ある程度キャッシュレスは進展すると予想するが、2025年、2030年いわゆる完全キャッシュレスにはまだまだ程遠いものと考えられる。

 

キャッシュレス化による恩恵は、特に社会全体で負担しているコストの観点では、90〜100%に近いものが実現できないとなかなか享受できず、単なる二重投資という話になる。

 

そこで、キャッシュレス化を真に進めていくためには、キャッシュレスの利用促進のみならず、現金が使われないようにする施策が必要であると考えられる。具体的には、店舗における①現金支払の上限制限②受付拒否、また、③紙幣廃止・切替措置、④硬貨鋳造・流通の減少・停止などが考えられるだろう。

 

①現金支払いの上限制限については、欧州では、大半の国でマネロン防止の観点から、店頭での現金支払につき支払上限を設定することで、店舗側が現金支払を受けることを嫌うように仕向けることでうまくキャッシュレス化を促進しているように思う。(後日、欧州の状況については詳細更新予定)欧州のみならず、マレーシアやオーストラリアでも導入検討がなされている模様で、オーストラリアにおいては、同施策導入による歳入増加も見込んでいるとのことである。

 

②現金支払いの受付拒否は、スウェーデンアメリカの一部州で、一部店舗が自発的に実施していたものに対して、消費者団体などからの反発の声も上がっていることを背景に、受付拒否はさせない方向性で議論がなされている。(スウェーデン中央銀行は、ホームページに現金支払いの受付拒否は契約の自由の話であるとの見解を掲載している)

 

③また、紙幣利用のディスインセンティブの施策では、インドにおいて、マネロン防止の観点から、高額紙幣の廃止・切替といった形での、現金の利便性を著しく下げる施策を行ったが、こちらは効果については賛否両論あるようだ。なお、キャッシュレスが極めて進んでいるスウェーデンにおいても紙幣切替が行われている。

 

④最後に硬貨を減少させる方向性の施策では、カナダでのペニー通貨の単位切り上げの施策や韓国におけるお釣りの電子マネーチャージなどの施策が挙げられよう。日本での一円玉のように、硬貨鋳造・流通はコストが非常に掛かることから、少額硬貨の廃止等の施策は社会コストの削減に効くことは間違いない。

 

日本においても、政府審議会等で現金利用のディスインセンティブについては度々話題には登っているもの、と聞いているが、日本国民の現金愛や、キャッシュレス社会に移行することで負担が増加する店舗側の加盟店手数料等の関係から、なかなか本格的な議論には至っていないのではなかろうか。

 

キャッシュレスの推進もある程度進んだ段階で、上記のようなキャッシュの利用をやめさせる方向性での施策検討が必要になるのではなかろうか。